関節リウマチとは
関節リウマチは、体を守るはずの免疫が自分の関節や骨を攻撃してしまう自己免疫疾患です。30~50歳代の女性に発症しやすく、男性よりも女性の方が約4倍も多いといわれています。
関節の滑膜に炎症「滑膜炎」が起こると、腫れや痛みが生じます。治療せずに炎症が長引くと関節が壊れ、将来的には変形を起こしてしまいます。早期に診断し、治療を始めることが大切です。
□朝に手がこわばる
□手指・手首や足指の関節が痛い
□足の裏に痛みや腫れがあり歩きにくい
□関節に熱を帯びた腫れがある
□2関節以上に症状がある
□健診でリウマチ因子が陽性といわれた
□家族にリウマチの方がいる
ぜひご相談ください
以前は「関節が痛んで動けない、骨が変形して生活が困難になる病気」というイメージがありましたが、今では早期に治療を始めることにより日常生活への支障を最小限にとどめることをめざせるようになりました。
関節が2ヵ所以上痛む、熱を持った腫れが続く、朝起きて手足がこわばるといった症状は関節リウマチの可能性がありますので、早めにご相談ください。
関節リウマチの診断
関節の痛みがある場合、どのように診断するのでしょうか。
血液・尿検査
・リウマチ因子、抗CCP抗体…リウマチ体質を調べる
・CRP…炎症の程度を調べる
・内臓合併症を調べる
画像検査
・レントゲン検査…骨や軟骨のダメージ、肺合併症を調べる
・関節エコー(超音波)検査、MRI検査…関節や腱の炎症の有無、程度を調べる
関節リウマチの診断は「この検査が陽性であればリウマチです」といった決め手があるわけではありません。症状(痛みや腫れのある関節の部位、持続期間)、関節を含め全身の診察、加えて血液検査(リウマチ因子、抗CCP抗体、CRPなど)、レントゲン検査、関節エコー(超音波)検査などを行い、分類基準をふまえながら総合的に診断します。
関節が痛む病気は実はたくさんあります。関節リウマチ以外の膠原病のグループ、ウイルス感染、甲状腺疾患、痛風、腱鞘炎、変形性関節症、更年期関節症、などでも同様の症状がおこることがありますので、診断にはこれらの似た病気との鑑別が大切です。
関節エコー(超音波)検査
関節リウマチをはじめ関節痛を起こす病気の診断に大変役に立つのが、関節エコー(超音波)検査です。診察だけではわからないような早期のリウマチを診断し、治療方針を決める際に役立ちます。更年期関節症や変形性関節症などの炎症のない病気を区別するためにも積極的に活用しています。
- 関節の炎症「滑膜炎」が見える
関節リウマチの本態は関節を内張りする滑膜の炎症「滑膜炎」であり、これにより痛み・腫れが生じ、骨や軟骨が破壊される原因となります。
レントゲンでは骨が壊れて初めて変化がみられますが、エコーでは骨に異常がない早期でも、関節の「滑膜炎」を画像でみることができ、診断の決め手になります。またその程度・勢いを評価することができます。
- 腱のつけ根の炎症「付着部炎」が見える
腱や靭帯が骨についている部分(付着部)に起きる炎症「付着部炎」もエコーで見ることができます。関節リウマチ以外でも、肘、膝、かかと(アキレス腱付着部)などの付着炎は、乾癬性関節炎をはじめとする脊椎関節炎のグループで多く見られます。
- 炎症以外の痛みの原因が見える
膝・股や手指第1関節(へバーデン結節)などに腫れや痛みを引き起こす変形性関節症は、年齢とともに増え最も多くみられる関節症です。軟骨がすり減っている、半月板がはみ出している、骨の棘(骨棘・こつきょく)ができている、水がたまっているなどの変化を見ることができます。
指の使いすぎによる「ばね指」(狭窄性腱鞘炎)も、エコーで見分けることができます。
女性ホルモンの減少と関連がある変形性関節症や腱鞘炎、更年期関節症などは、更年期を迎える40代から増え、リウマチを心配される方が多いです。「滑膜炎」のある関節リウマチとは治療が大きく異なるため、炎症があるかどうかを見分けることがポイントとなります。
関節リウマチの治療
関節破壊が進む前の早期に薬物治療を始めることが大切です。
様々な治療薬が開発され、関節リウマチの治療は大きく進歩しています。
基本はリウマチの免疫異常を改善し、炎症を抑える「抗リウマチ薬」の内服です。メトトレキサートを中心とした「抗リウマチ薬」は、効果発現に1~3ヵ月かかるため、副作用に注意しながら継続することが重要です。薬の効果が感じられるまでの期間、関節症状が強い場合には、ステロイド関節内注射を行い、今ある痛みをとることも大切にしてます。
抗リウマチ薬だけでは、十分な治療効果が得られない場合でも、「生物学的製剤(注射)」や「JAK阻害薬(内服)」を用いることで、骨破壊や関節破壊を防ぎ、患者さんのQOL(日常生活の質)を維持することが期待できるようになってきました。
治療薬について⇨関節リウマチ この病気にはどのような治療法がありますか|日本リウマチ財団 (rheuma-net.or.jp)
治療の目標
1 関節の炎症を抑え、痛みや腫れがない状態を保つ (臨床的寛解)
2 骨や関節の破壊の進行を抑える (構造的寛解)
3 体の機能を保ち、生活の質(QOL)を改善する (機能的寛解)
まずは関節リウマチの炎症を十分に落ち着かせ、痛みや腫れがない状態にすること(1.臨床的寛解)を目指します。定期的に病状をチェックし、治療を見直していくことで、臨床的寛解の状態を維持し続けることが大切です。それにより、骨や関節の破壊を抑え(2.構造的寛解)、生活の質(QOL)の改善(3.機能的寛解)につながります。
当院で心がけていること
- 関節リウマチは「寛解」をめざして治療します
- 「生物学的製剤(主に皮下注射)」や「JAK阻害薬」を必要に応じて併用します
今ある腫れや痛みの症状を抑えること、将来骨が壊れたり変形して生活機能が低下するすることを防ぐこと、2つの目標のために積極的に治療を行います。
- 関節エコー検査を活用し、早期診断、鑑別診断、寛解判定を行い、適切な治療へとつなげます
- ライフスタイル・ライフステージ、ご希望に沿った治療をご提案します
様々な治療薬が出てきたことで、患者様のライフスタイルやご希望を考慮した治療選択ができるようになってきました。
生物学的製剤の注射は、ご自宅で打っていただくこと(自己注射)が可能です。ご自分で打つのが不安な方はクリニックで受けられます。投与間隔(1週毎、2週毎、4週毎)も注射製剤の種類により異なりますし、注射製剤でなく内服薬(JAK阻害薬)の選択肢も増えました。
学校、仕事、結婚、妊娠・出産、子育て、介護、それぞれの時期によって目指すところや心配事もかわるでしょう。たくさんの良い治療法が出てきたからこそ、病気をよくした先にご本人がめざす生活の形が実現できるよう、サポートをさせていただきたいと思っています。
- 妊娠や授乳のご希望を応援します
妊娠や授乳中も使えるリウマチの薬の種類が増え、多くの関節リウマチの方が病気コントロールしながら、健康な赤ちゃんをお育てになられています。
妊娠に向けてのポイント
1 リウマチが落ち着いていること
2 妊娠・授乳に問題のない薬で治療していること
妊娠前に関節炎をしっかりコントロールしておくことが大切です。リウマチが落ち着いていることが、妊孕性を高め(妊娠しやすくなる)、妊娠経過を安定させ(お母さんと赤ちゃんともに)、妊娠~授乳中のご自身の関節を守ることにつながります。
リウマチの薬には、①あらかじめ中止する必要がある薬(先天異常や流産を起こしやすい薬)、②妊娠が判明するまで続けることができる薬、③必要があれば妊娠中も使用可能な薬があります。妊娠ご希望までの時期や現在のリウマチの病状により、使用するリウマチ薬を選択し計画的に治療を進めていくことが大切です。
すこしでも妊娠を考えはじめたら早めにご相談くさい。安心して妊娠出産を迎えられるよう丁寧にご対応いたします。
妊娠についてについて⇨関節リウマチ 妊娠と育児|日本リウマチ財団 (rheuma-net.or.jp)
妊娠中の薬剤について注意すること⇨妊娠中の管理|「SLE,RAやIBD罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針の作成」研究班 (ra-ibd-sle-pregnancy.org)
プレコンセプションケア(ご自身でできること)⇨ プレコン・チェックシート|国立国際医療研究センター (ncchd.go.jp)
※プレコンセプションケア(Preconception care)とは、妊娠前のヘルスケアのことです。将来の妊娠を考えて女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことで、より健康になること、元気な赤ちゃんをさずかるチャンスを増やすこと、さらに女性や将来の家族がより健康な生活を送れることをめざします。